ワイドショーで事件が起きるたび、警察の内側を淡々と解説していた人がいました。
元警視庁刑事の北芝健さんです。
スーツ姿でスタジオに座り、捜査の手順や犯人像を語る。あの独特の落ち着いた口調を覚えている方も多いと思います。ところが、いつの間にか画面で見かけなくなりました。引退したのか、それとも何かあったのか。調べてみると、活動をやめたどころか、活動の場所そのものが変わっていました。
・北芝健の現在の肩書きと、テレビの外で続けている3つの活動
・大学院で教えている「パブリックインテリジェンス研究」という分野
・商社マンから警視庁刑事、そして犯罪学者になるまでの経歴
北芝健の現在は犯罪学者|活動の場は大学院と道場へ移っている
結論から書きます。北芝健さんは現在も引退しておらず、研究・教育・武道指導という3つの場で活動を続けています。テレビでの露出が減ったことと、活動そのものが止まったことは別の話でした。
現在の肩書きは「犯罪学者・作家・元警視庁刑事」
北芝健さんが現在名乗っている肩書きは、犯罪学者・作家・元警視庁刑事です。
講演依頼を受け付けている各社のプロフィールでも、この並びで統一されています。
コメンテーターという肩書きが先に来ていないところがポイントです。テレビ出演はもともと本業ではなく、研究者・書き手としての仕事に付随するものでした。
そのほかにも、警察ジャーナリスト・漫画原作者・空手家・犯罪心理学者といった顔を持っています。ひとつの職業名で収まらない人です。
日本経済大学大学院で「パブリックインテリジェンス研究」を講義
現在の活動の中心は、大学院の教壇です。
日本経済大学大学院の講師として「パブリックインテリジェンス研究」を担当しています。
あわせて犯罪学、国際関係論の講義も受け持っています。
「パブリックインテリジェンス」とは何を扱う分野なのか
耳慣れない言葉ですが、おおまかにいえば、公開されている情報をどう集めて分析し、社会の安全に役立てるかを扱う分野です。
スパイ映画に出てくるような秘密情報ではなく、誰でも見られる情報のほうを対象にします。
刑事として現場で情報を扱い、公安警察でその精度を求められ、退官後は大学院で犯罪社会学を研究した——この経歴が、そのまま講義のテーマにつながっている形です。
日本安全保障・危機管理学会の顧問を務めている
学術団体での役職もあります。
学術社団 日本安全保障・危機管理学会の顧問であり、同学会の研究講座でも講師を務めています。
テレビのコメンテーターという立ち位置から、学術側で意見を求められる立場へ移っている、と言い換えてもいいかもしれません。
空手道場「修道館」の館長として指導を続けている
もうひとつの顔が武道です。
護身術・空手道場「修道館」の館長として、現在も指導にあたっています。
ここは飾りの肩書きではありません。後述するとおり、警察官時代から一貫して武道を続けてきた人です。
防犯や護身をテーマにした講演と道場での指導は、同じ根っこから伸びています。
防犯・護身・危機管理をテーマにした講演活動
講師派遣会社を通じた講演活動も現在進行形です。
扱うテーマは、こうした内容です。
- 子どもを狙う犯罪と、その防ぎ方
- 身を守るための護身・防犯の実践
- 組織犯罪・薬物の実態
- 企業や自治体向けの危機管理
- 健康・アンチエイジング
教育・青少年育成、防災防犯、文化教養、健康と、登録されているカテゴリーも幅広くなっています。
元刑事の実体験を交えて話せる人はそう多くないため、この分野では代えのきかない講師です。
XやYouTubeでの発信も続いている
発信の場も、テレビからネットへ移っています。
X(旧Twitter)ではアカウント(@kitashibaken)で発信を続けており、YouTubeチャンネルも運営しています。
テレビ局のブッキングを待つ必要がなく、話したいテーマを自分の尺で話せる。事件解説を専門とする人にとっては、むしろ相性のいい場所です。
テレビで北芝健を見かけなくなった理由をどう見るか
ここが一番知りたいところだと思います。
ただし、本人や所属先から「テレビ出演をやめた」という公式な発表は確認できません。
ネット上には理由を断定する書き込みもありますが、一次情報にあたるものは見つからず、そのまま事実として扱えるものではありませんでした。
確認できる事実として言えるのは、次の2点です。
- 大学院講師・学会顧問・道場館長・講演という、テレビ以外の活動が現在も継続している
- 「最近見かけない」という声自体は10年以上前から出ており、特定の時期に急に消えたわけではない
ワイドショーのコメンテーターは、番組の改編や扱う事件の傾向で顔ぶれが入れ替わる世界です。出番が減ることと、その人の仕事が終わることは同じではありません。
北芝健とは|商社マンから警視庁刑事、そして犯罪学者へ
ここからは、現在に至るまでの経歴を追います。テレビで語られていたのは、その一部分でしかありませんでした。
プロフィール|生年月日・出身地・体格
まず基本情報を整理します。
- 生年月日:10月22日(生年は非公表)
- 出身地:東京都葛飾区
- 血液型:B型
- 身長178cm/体重89kg
- 趣味:読書、短歌、川柳、海外バックパッカー
生年を公表していないため、正確な年齢は分かりません。
178cm・89kgという体格は、後述する武道歴を考えれば納得のいく数字です。
医師の家系に生まれ、早稲田卒業後は商社へ
実家は医師の家系でした。祖父も両親も医者という環境で育っています。
そのまま医学の道へ進んでもおかしくない家庭ですが、進学したのは早稲田大学でした。
卒業後に就職したのも病院ではなく、商社(貿易会社)です。
一念発起して警視庁へ入庁
商社勤めから警察官へ転職するというのは、当時としてもかなり異例のコースです。
安定した会社員の立場を捨てて、現場に出る仕事を選んでいます。
医者の家に生まれ、商社に入り、そこから警視庁へ。この時点ですでに、経歴が一直線ではありません。
交番勤務から私服刑事へ|警視庁時代に扱った事件
警視庁でのスタートは地域警察、つまり交番勤務でした。
配置されたのは数寄屋橋、築地、銀座4丁目。いずれも都心のど真ん中で、人と事件の量がまったく違う場所です。
その後、私服の捜査官となり刑事警察へ進みます。
担当した事件の種類は、殺人、強盗、詐欺、暴力犯、特殊犯罪と広範囲におよびました。
選挙取締本部や特別捜査本部での捜査経験もあります。
公安警察へ|要人警護とロス市警・FBIとの交流
刑事警察のあとに移ったのが公安警察です。
警部補の階級で配属され、外国要人の警護にも従事しました。
この時期にロサンゼルス市警やFBIとの交流を持ち、実務で使える英語力を身につけています。
テレビで海外の捜査手法に触れた解説ができていたのは、この経験があったからです。
退官後は早稲田大学大学院で犯罪社会学を研究
警察を退官したあと、北芝健さんが向かったのは母校の大学院でした。
早稲田大学大学院で犯罪社会学を研究しています。
現場で事件を扱ってきた人が、それを学問として捉え直しに戻った形です。
ここから複数の学校で教壇に立つようになり、現在の大学院講師という立場につながっていきます。
1990年には僧籍も取得している
あまり知られていませんが、1990年に僧籍を取得しているという記載もあります。
犯罪捜査、犯罪学、そして仏門。並べてみると不思議な組み合わせですが、いずれも人の生き死にと隣り合わせの領域ではあります。
漫画原作者・作家としての顔と代表的な著書
文筆業も長く続けてきた仕事です。
単行本の著者、エッセイスト、そして漫画原作者としても活動しています。
確認できる主な著書には、こうしたものがあります。
- 『刑事捜査バイブル』
- 『警察裏物語』
- 『警察の表と裏99の謎』
- 『誰が子どもを狙うのか』
- 『歌舞伎町がもし100人の村だったら』
- 『ニッポン非合法地帯』
- 『ヤクザ極道学』
- 『警察官の泣ける話』
- 『北芝健のアンチエイジング道場』
警察の内側を扱った本が中心ですが、最後のアンチエイジング本のように健康分野にも広がっています。講演テーマに健康が入っているのは、この流れです。
空手6段・柔道2段・日本拳法3段という武道歴
修道館の館長という肩書きの裏付けが、この段位です。
- 沖縄剛柔流空手 6段
- 警視庁柔道 2段
- 日本拳法 3段
警察官として身につけた柔道に、空手と日本拳法が重なっています。
護身術を教える立場としては、これ以上ないほど筋の通った経歴です。
まとめ:北芝健の現在と、テレビの外にある仕事
最後に整理します。
- 北芝健は現在も引退しておらず、犯罪学者・作家・元警視庁刑事として活動している
- 日本経済大学大学院の講師として「パブリックインテリジェンス研究」を担当している
- 学術社団 日本安全保障・危機管理学会の顧問を務めている
- 護身術・空手道場「修道館」の館長として指導を続けている
- 防犯・護身・危機管理・健康をテーマにした講演活動を行っている
- XやYouTubeでの発信も続けている
- テレビ出演が減った理由について、本人や所属先からの公式発表は確認できない
- 経歴は医師の家系→早稲田大学→商社→警視庁(交番・刑事・公安)→早稲田大学大学院という異色のコース
- 沖縄剛柔流空手6段、警視庁柔道2段、日本拳法3段の武道家でもある
テレビに出ている時間は、その人の仕事のごく一部です。
北芝健さんの場合、画面から見えなくなったあとに残っていたのは、大学院の教室と、道場と、講演会場でした。
見かけなくなったのは、こちらが見る場所を変えていなかっただけなのかもしれません。


