俳優の井浦新さんについて調べていると、国籍という言葉が一緒に並ぶことがあります。
実はこの噂、たどっていくと本人の私生活ではなく、ある一本の映画に行き着くんです。
公開されている資料で何がどこまで確認できるのか、確認できないことも含めて正直に整理していきますね。
・井浦新の国籍が資料上どう記載されているか
・在日韓国人説の出どころになった映画と役柄
・ARATAから本名へ戻した経緯と、確認できなかったこと
井浦新の国籍と在日韓国人説の出どころ
井浦新さんの国籍について、公開されている資料で何がどこまで確認できるのかを整理しました。
在日韓国人説がなぜ出てきたのか、その出どころもあわせて追いかけていきます。
国籍は日本と記載されている
まず結論から書きますね。
井浦新さんの国籍は、日本語版Wikipediaの人物情報欄に「日本」と記載されています。
そのうえで、正直にお伝えしておきたいことがあります。
井浦新さん本人や所属事務所が、国籍そのものについて公式に発言した記録は確認できませんでした。
これは井浦新さんに限った話ではありません。
日本の俳優さんの公式プロフィールは、生年月日・出身地・身長・血液型あたりまでを載せるのが一般的で、国籍の欄はそもそも存在しないことがほとんどなんですよね。
つまり「本人が公表していない」というより、「公表する欄がない」というのが実際のところです。
なので、この記事で扱えるのは次の3つだけになります。
| 種類 | 中身 | 確認できる範囲 |
|---|---|---|
| 記載されている情報 | Wikipediaの国籍欄「日本」 | 事典サイトの記載として確認できる |
| 公式プロフィール | ORICONなどの経歴・出身地 | 国籍欄そのものが存在しない |
| 本人の発言 | 国籍に触れた発言 | 確認できない |
この線引きは最後まで守って書いていきます。
在日韓国人説の出どころは映画かぞくのくに
では、なぜ検索窓に井浦新の国籍と打ち込む人がこれだけいるのか。
ここがこの記事のいちばんの本題だと思っています。
複数の媒体が、そろって同じ出どころを挙げていました。
2012年公開の映画『かぞくのくに』です。
この作品で井浦新さんが演じたのが、在日コリアンの兄という役どころでした。
しかも役作りとして、髪型や顔まわりの雰囲気まで役に寄せていたんですね。
その演技があまりにも自然だったせいで、本当にそういうルーツがある人なんじゃないかと受け取った視聴者が一定数出た、という流れです。
これ、役者さんにとっては褒め言葉のはずなんですけどね……。
演技が本物すぎて、逆に本人の属性を疑われてしまうという。
なんとも皮肉な話だなと思いました。
噂の出どころは私生活ではなく、あくまで作品の中の役柄だったということです。
顔立ちを根拠にする書き方には乗らない
まとめ系の媒体を読んでいると、顔立ちが韓国の俳優に溶け込みそうだから、という書き方をしているものもありました。
ただ、これは書き手の印象を根拠にした推測なんですよね。
顔立ちから出自を推し量るという考え方そのものが、当ブログとしては採用できるものではありません。
なのでこの記事では、根拠として扱わないことにします。
演じたのは在日コリアン2世の兄ソンホ役
噂の出どころになった作品を、もう少しきちんと紹介させてください。
役柄と本人が混同されている以上、その役がどういうものだったかを知るのがいちばんの近道だと思うからです。
『かぞくのくに』はヤン・ヨンヒ監督の作品で、監督自身の実体験がもとになっています。
北朝鮮への帰国事業で離れ離れになった家族の物語で、井浦新さんが演じたのは在日コリアン2世の兄・ソンホという役でした。
25年ぶりに、病気の治療のために日本へ戻ってくる兄。
妹役を演じたのが安藤サクラさんです。
作品としての評価も高くて、第62回ベルリン国際映画祭で国際アートシアター連盟賞を受賞しています。
日本での劇場公開は2012年8月4日でした。
井浦新さんはこの作品での演技によって、ブルーリボン賞の助演男優賞を受賞しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | かぞくのくに |
| 公開年 | 2012年(日本公開は8月4日) |
| 監督 | ヤン・ヨンヒ |
| 井浦新の役 | 在日コリアン2世の兄・ソンホ |
| 共演 | 安藤サクラ(妹役) |
| 受賞 | ベルリン国際映画祭 国際アートシアター連盟賞/ブルーリボン賞 助演男優賞(井浦新) |
役作りにあたっては、監督の母親や兄から実際の体験を聞き取ったとも伝えられています。
そこまで踏み込んだからこそ、あの説得力が出たんでしょうね。
政治的な使命はないと本人が語っている
この作品について、井浦新さんが取材で語った言葉が残っています。
国籍の話を考えるうえで、いちばん本人の姿勢が見える部分なので、そのまま紹介させてください。
映画.comのインタビューで、政治的な使命を背負って演じたのかと問われた井浦新さんは、こう答えています。
「全くないです。政治的な使命を持つとか、監督のお兄さんを役者に憑依させてとか、そういうことで作る話ではない」
そのうえで、家族の描き方についてはこう続けていました。
「種類は違えど、すべての家族に悩みというものはあって、悩み方が違うだけだと思います」
北朝鮮という背景は、あくまで背景として捉えて演じた、と。
……この距離の取り方、すごくいいなと思いませんか。
特別な家族の話としてではなく、どこにでもある家族の話として演じた。
つまり井浦新さんは、この役を出自や政治の物語としてではなく、家族の物語として引き受けていたわけです。
そう考えると、役柄から本人の国籍を推測するという読み方は、本人の意図からいちばん遠いところにある気がしてきます。
本名は井浦新でARATAから戻した経緯
もうひとつ、国籍を検索する人がひっかかりやすいポイントがあります。
名前です。
井浦新さんは以前、ARATAというアルファベット表記の芸名で活動していました。
アルファベット一語だけの芸名って、たしかにいろいろな想像を呼びますよね。
ただ、改名の経緯をたどると、その想像とはまったく逆の話が出てきます。
きっかけは、若松孝二監督の映画『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(2012年公開)で三島由紀夫役に主演したことでした。
若松監督が、この映画は日本というものを表したい、と語っていた。
それを聞いた井浦新さんが、日本を描く映画のエンドロールにアルファベットのARATAが出るのは好ましくない、と考えたんですね。
そして自分から、本名に戻したいと監督に相談しました。
つまり本名の井浦新は新しく作った名義ではなく、もともとの名前に戻したものだということです。
しかもこの相談、すんなり通ったわけではないそうです。
若松監督は最初「バカヤロー」と怒鳴ったと伝えられています。
名前を戻したら、誰が主演か分からない、と。
それはそうですよね、ARATAの名前で長く知られてきたわけですから。
それでも最終的には、作品のことを考えて申し出た井浦新さんの姿勢を汲んで、監督は改名を認めたそうです。
この話、個人的にすごく好きなんですよね。
日本を描く映画のために自分の名義を手放しにいく役者と、それを一度は怒鳴りながら最後は受け入れる監督。
なんかいいなと思います。
出身地は日野市と渋谷区で記載が割れる
ここからは、確認しきれなかったことも正直に書いていきます。
まずは出身地です。
日本語版Wikipediaは東京都日野市、ORICONのプロフィールは東京都渋谷区と記載していて、内容が食い違っています。
| 出典 | 記載されている出身地 |
|---|---|
| Wikipedia | 東京都日野市 |
| ORICON プロフィール | 東京都渋谷区 |
どちらも東京都内ではあるので、生まれと育ちが違うのか、どちらかの記載が更新されていないのか。
そのあたりまでは、公開されている情報からは判断できませんでした。
出身地は東京都という点までは一致していますが、市区町村のレベルでは資料によって記載が異なります。
いっぽう生年月日については両方の資料が一致していて、1974年9月15日です。
こちらは確定した情報として扱って問題ないと思います。
両親の出自を示す一次情報は確認できない
国籍の話になると、たいてい両親の話が出てきます。
井浦新さんについても、両親がともに小学校の教員だったという記述を見かけました。
ただ、これを書いているのはまとめ系の媒体ひとつだけで、大手メディアの報道や公式プロフィールでは裏づけが取れませんでした。
ご両親の職業や出自を示す一次情報は、確認できませんでした。
ここは正直に書いておきます。
同じことが、一部で見かける「本名は別にある」という記述にも言えます。
Wikipediaと複数の媒体は本名を井浦新としていますが、まったく別の本名を書いている媒体もありました。
記載が割れているうえに、後者を裏づける一次情報は見つかりません。
こういう情報は、書けば書くほど尾ひれがついていきます。
なので当ブログでは、確認できたところで止めておきます。
国籍の噂に対する世間の声
ここまで見てきた材料をもとに、この噂がどう受け止められているのかを整理してみます。
大きく分けて、3つの反応があるように感じました。
ひとつめは、演技への評価としての反応です。
在日コリアンの役をあれだけ自然に演じたのだから、本人もそうなのではと受け取った層ですね。
これは疑いというより、演技が上手すぎたことの副産物だと思います。
ふたつめは、名義への反応です。
ARATAというアルファベット表記の時期を知っている人が、そこからいろいろと想像したというパターン。
ただこれは、改名の経緯を知ると完全に逆向きの話だったことが分かります。
みっつめは、そもそもこの噂を知らなかった層です。
検索されている割に、根拠として挙がっているのは役柄と旧芸名の2つだけというのが実態でした。
しかもその2つとも、たどっていくと本人の私生活とは関係のないところに着地します。
なんというか……調べれば調べるほど、噂のほうが痩せていく感じでした。
井浦新の国籍を調べる人向けの関連情報
ここからは、井浦新さんについて一緒に検索されることが多い話題をまとめていきます。
家族のことから、俳優以外の活動まで幅広く見ていきますね。
妻は山本あいで義父は衆議院議員
井浦新さんは2009年に、一般女性の山本あいさんと結婚しています。
義理の父親にあたるのが、衆議院議員の山本有二さんです。
この関係はWikipediaの親族欄にも記載があり、複数の媒体でも一致しています。
さらに、義理の弟にあたるのが俳優の鈴木一真さん。
親族に政治家と俳優が並ぶという、なかなか珍しい構図になっているんですよね。
奥さまが早稲田大学法学部の出身で、結婚当時は24歳だったという記述も見かけましたが、こちらはまとめ媒体にしか載っていませんでした。
裏づけが取れていないので、参考程度に受け取ってもらえればと思います。
子供は2人と伝えられている
お子さんについては、2009年に第一子、2012年に第二子が生まれたと伝えられています。
ただ、これも公式発表として確認できる一次情報は見つかりませんでした。
一般の方であるご家族のことなので、細かく公表されていないのはむしろ自然かなと思います。
若い頃はモデルから芸能界入り
俳優としてのイメージが強い井浦新さんですが、キャリアの出発点はモデルでした。
大学在学中の19歳のとき、インディーズブランドのコレクションをきっかけにモデル事務所にスカウトされています。
通っていたのは東京経済大学で、こちらは中退しています。
つまり、自分から芸能界の門を叩いたタイプではないんですよね。
服の世界にいたら声をかけられた、という入り方でした。
ドラマデビューは1998年です。
モデルから俳優へ、そして後年はファッションデザイナーとしても活動するという流れになっています。
10代でスカウトされてから、40代・50代になっても第一線で役をもらい続けている。
これって、けっこうすごいことだと思いませんか。
日曜美術館の司会など日本文化を伝える活動
井浦新さんを語るうえで、俳優業と同じくらい外せないのがこちらです。
日本の美術や手仕事を伝える活動を、長く続けているんですよね。
| 活動 | 内容 |
|---|---|
| 京都国立博物館 文化大使 | 2013年から就任 |
| NHK『日曜美術館』 | 司会を担当 |
| 匠文化機構 | 理事 |
| ERNEST CREATIVE ACTIVITY | ものづくり集団のディレクター |
| 著書 | 『井浦新の美術探検 東京国立博物館の巻』 |
『日曜美術館』では司会として、日本各地の美術を訪ねる企画も担当していました。
著書のほうも、考古・絵画・アジア・技という4つのテーマで日本とアジアの美術を紹介するという、かなり本格的な内容です。
タレント本というより、美術の入門書に近いですね。
日本の文化財や手仕事に、俳優としてではなくひとりの担い手として関わり続けているのが井浦新さんという人です。
三島由紀夫役のときにアルファベット表記の名義を返上した話とも、まっすぐつながっている気がします。
出演ドラマはアンナチュラルや最愛
最後に、俳優としての仕事に触れておきます。
井浦新さんは1998年のドラマデビュー以降、映画とテレビドラマの両方で幅広く出演を重ねてきました。
検索でよく一緒に並ぶのが、アンナチュラル・最愛・蛇にピアスあたりです。
映画では、この記事でも取り上げた『かぞくのくに』と『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』が、どちらも2012年の作品になります。
2012年は、名義を本名に戻し、代表作といえる2本が公開された節目の年だったわけです。
プロフィールの基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 1974年9月15日 |
| 出身地 | 東京都(日野市/渋谷区で記載が割れる) |
| 身長 | 183cm |
| 血液型 | A型 |
| 所属事務所 | VIPタイムズ |
| 職業 | 俳優・ファッションモデル・ファッションデザイナー |
身長183cmというのは、日本の俳優さんのなかではかなりの長身ですね。
モデルからキャリアを始めたのも納得の数字です。
井浦新の国籍のまとめ
- 井浦新の国籍は、日本語版Wikipediaの人物情報欄に日本と記載されている
- 本人や所属事務所が国籍そのものに触れた発言は確認できない
- 俳優の公式プロフィールに国籍欄がないため、記載がないこと自体は珍しくない
- 在日韓国人説の出どころは、2012年公開の映画『かぞくのくに』での役柄
- 同作で演じたのは在日コリアン2世の兄・ソンホ役
- 役作りで容姿も役に寄せていたため、視聴者が役と本人を混同したとされる
- 監督はヤン・ヨンヒで、監督自身の実体験がもとになった作品
- 同作でブルーリボン賞の助演男優賞を受賞している
- 本人は取材で、政治的な使命を持って演じたわけではないと語っている
- 旧芸名はARATAで、2012年に本名の井浦新へ戻した
- 改名は『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で三島由紀夫を演じたことがきっかけ
- 日本を描く映画のエンドロールにアルファベット表記は好ましくないという本人の判断だった
- 出身地はWikipediaが日野市、ORICONが渋谷区と記載が割れている
- 両親の職業や出自を示す一次情報は確認できない
- 京都国立博物館の文化大使やNHK『日曜美術館』の司会など、日本文化を伝える活動を続けている


